山椒大夫の幼児教育

8歳の娘:安寿と、7歳の息子:厨子王の育児や教育、受験・進学を通じて感じたことを書きます。

子供を殺してくださいという親たち

押川剛「『子供を殺してください』という親たち」
及びそのコミック化を読んだ。

 

 

押川氏は、もともと民間の警備会社をしていたが、社員の一人が精神病になり、うまく医療につなげられず悪化した経験から、病識が薄いために精神科受診に合意しない人などを説得して精神科に送り届ける業務をするようになった。家に閉じこもったり、問題行動を起こしたりして、疲弊した家族が依頼してくるのである。単に移動を助けるだけではなく、病院探し、その後の生活の相談なども幅広く行う。

彼らの中には、本当に重度の精神病で、親には問題がない人もいるが、父親の暴力・母親の教育虐待・機能不全家庭などが背景にあることもあり、親もおかしい場合も多い。むしろ親のおかしさが、積もり積もって、そこに精神病の体質というか要因も重なって、にっちもさっちもいかなくなるということもあるようだ。機能不全家庭に育っても、精神病の素因がなければ、「俺の親はひどかった」という思い出だけで、その後の人生は何とかやっていける人が多いだろうが、家庭の問題や親の問題が、精神病のスイッチを押してしまうこともあるのだろう。

押川氏は、子育ての最後の最後を見ている。親たちが、どんぐり倶楽部・花まる・Pグマなど、今まで紹介してきたような教育者たちに、早い段階で出会っていたら、少しでも運命が変わったかもしれない。これだけはやっちゃダメ・言ったらダメを積み重ねてしまった場合もあるかもしれないし、その子が特にストレスに弱い性質もあったのかもしれない。いろんなボタンをかけちがえ、少し外れてしまって、行きつくところに行きついてしまうのかもしれない。

コミックは、竹内結子でドラマ化もされた「ダンダリン」の作者が書いている。コミック化にあたり、原作にはいないキャラ(押川氏の秘書役?の女性。この人も元ひきこもりか何かで押川氏に救われた設定らしい)なども出てくる。マンガで映像化されたならではの緊迫感がある。目が吊り上がる描写、狂気の描写が良い。

同じ作者のオリジナル作品「マトリズム」、「銀座からまる百貨店 お客様相談室」も楽しく読んだ。

「マトリズム」は、麻薬取締官の話で、ごく普通の人たちが薬物に取り込まれていく様子がうまく描かれている。子供が中高生の頃に読ませたい本である。

「銀座からまる百貨店 お客様相談室」は、関根眞一「となりのクレーマー」をアレンジしたものである。関根氏はクレーム対応のプロである。「となりのクレーマー」には、かなり現実的な対応法も書いてあるが、「銀座からまる」はギャグ要素が強い。

 

同じくクレーマー対応という意味では、医療業界では尾内康彦氏が有名である。「患者トラブルを解決する技術」背筋が寒くなるようなクレーム事例が多い。